西村佳哲『一緒に冒険をする』を読んで

子育て
西村佳哲『一緒に冒険をする』弘文社、2018

「これは〇〇の本です」と言いきるのは怖い。そこに入りきらない広がりや含むことのできない余白を捨てることになるから。しかしあえて私はこの本を定義してみたい。西村佳哲『一緒に冒険をする』は「異文化理解」の本です、と。

西村佳哲『一緒に冒険をする』弘文社、2018

生きているとさまざまな人と出会う。自分と同じ人など一人もいない。それが障害者だったり、病気を抱える人だったり、LGBTだったり、さまざまな悩みを抱える人だったり、ほんとうにいろんな人と出会う。これを「異文化」との出会いとすると、この世界で人は、異文化を理解し、多様性を認識して、共生していくことが好ましい

そのためには、「目標」を立てて、それに向かって「計画」的に努力する生き方とは別の生き方があるんじゃないの?というのが、私が著者から受け取った提案だ。ただそれをうまく言い換える言葉が思いつかなくて、そんなときに出会ったのが工房まるの吉田修一さんと樋口龍二さんの言葉だったんだ、そんな風にこの本は始まる。

最近クレパスに心惹かれています

この本は9つのインタビューが収録されている。最初のインタビューが工房まるのお二人のものだ。工房まるとは福岡市にある障害福祉サービス事業所であり、特定非営利活動法人。吉田さんと樋口さんはそれぞれ前者の施設長と後者の代表である。

吉田さんと「能力面で障害があって言葉にできない人は、どうやって自分の想いを伝えているのかな?」、樋口さんは「さっきまでなぜ(メンバーに)近づけなかったのか?」と内発的な問いを持ってこの事業に携わり始める。

お二人が体得したメンバーとの関係性は「人間対人間の関係」であり、「知らないところへ、一緒に冒険しに行く」という姿勢。決して「かわいそう」だから支援して「あげる」だとかの無自覚に上から構えたようなものではなく、フラットな関係だ。

工房まるでは「障害は”間”にある」と考える。障害者の側に問題を帰すのでもなく、社会に問題があると責め立てるのでもなく、障害とは「したい」という欲求があるから生じるもので、つまりそれは障害者と対象との”間”にあるんだと。だから間にツールをつくればいいという発想だ。

工房まるでいうと、ツールは創作であり、個の表現。メンバーが”得意なこと”、”つづけられること”を通して「両者(障害者と健常者)がごく普通に日常的に集まれる場所」をつくっている。

工房まるのお二人は「自立」を「その人らしさが立ち現れてきたとき」と定義する。経済的な自立、企業に正社員として就職することばかりが自立なのではなく、人とのつながりの中で、その人がその人らしさを発揮し始めたときを「自立」と呼ぶんだよ、と。

こんなに素敵なお話をしている吉田さんだが、施設長になった敬意を意外にもこんな風に話していた。「『自分がやります』と言ってしまった。」と。思考より先に思いが口に出たんだ、と感じた。こんな風に自分の衝動を無視せず付き合うのも悪くない。

描いていると無心になれる

余談だが、昨日『Most likely to succeed』という話題の映画を見た。地域で行われた上映会に参加して、上映後のディスカッションにも参加したのだが、じゃあどうやって、を考えるときに、この『一緒に冒険をする』は多くの人にとって一読の価値がある本だ、と私は思う。

上映会が行われたのがこの日の午後で、実は午前中に『一緒に冒険をする』の読書会を行った。その参加者は、私がこの本を読みながら頭に浮かんだ人たちに声をかけて募ったのだが、読書会で読みこんでみて改めて、この本はもっと多くの人が読むのをおすすめしたい名著だ、と思ったのです。

そういうわけで、自分なりの『一緒に冒険をする』の読みを少しずつアップしていこうかな、と思います。読書会もまた別のメンバーでやりたいと思ってます。お楽しみに。

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